2017年11月15日号
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artscapeレビュー

河口龍夫 時間の位置

2016年12月15日号

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会期:2016/10/08~2016/11/26

川口市立アートギャラリー・アトリア[埼玉県]

さいたまトリエンナーレを見に行こうとしたが、電車に乗ったら気が変わって、美術館をハシゴすることに。トリエンナーレはまだ先までやってるし。まず訪れたのは、川口市のアトリアで開かれている「河口龍夫 時間の位置」。河口龍夫といえば、60年代から活動するベテランのなかでもっとも旺盛に発表し続けている現代美術家ではないだろうか。東近をはじめ主要な美術館を総ナメにしているといっても過言ではない河口が、なぜ美術館とも名乗らない川口市のアートギャラリーで個展を開くのかといえば、同じカワグチだからというわけではなく、彼の代表作のひとつ「DARK BOX」シリーズが関係しているらしい。「DARK BOX」とは真っ暗な空間で「闇」を封印した鉄の箱状の作品で、1975年に第1作が発表され、97年から毎年ひとつずつ制作されている。この鉄の箱を鋳造しているのが「キューポラのある町」(キューポラは鋳物の溶解炉)として知られる川口の鋳物屋であり、その新作をアトリアのある並木元町公園の地下に掘られた雨水地下調整池で制作する(つまり地下空間で「闇」を閉じ込める)ことになったのだ。だから新作《DARK BOX 2016》は、箱(鋳物)も中身(闇)も川口オリジナルというわけ。もっともこの箱、巨大な豆腐パックみたいな台形を向かい合わせに重ねた鉄の固まりで、もちろん内部は見えない。もし見ようとして開封したら闇は消えるので、いずれにしても「闇」は見えない(作者本人は「闇が見える」というが)。この《DARK BOX 2016》を中心に、ドローイングや関連資料も併せて展示。
ほかの部屋では、仕切られた箱状のプールにさまざまな時を刻む時計を浮かべた《漂う時間の時間》、虫や小動物の化石をフロッタージュした「石になった昆虫」や「石になった動物」シリーズなど、時間をテーマにした作品を手際よく紹介している。なかでも目を引いたのは「『陸と海』からの時相」シリーズで、これは波打ち際に板を置いて撮影した《陸と海》と題する写真の外側に、鉛筆で風景を描き加えたもの。《陸と海》は1970年に開かれた伝説的な国際展、東京ビエンナーレ70「人間と物質」に出品された初期の代表的作品であり、半世紀近くたって自作に加筆、いや自己批評したともいえる。いったいどういう心境だろう。

2016/11/12(土)(村田真)

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