2017年11月15日号
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artscapeレビュー

荒木経惟 写狂老人A

2017年08月01日号

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会期:2017/07/08~2017/09/03

東京オペラシティアートギャラリー[東京都]

荒木経惟は過去形の写真家ではなく、現在進行形の写真家である。そのことを充分にわかっているつもりでも、1980~90年代のあの凄みのある仕事ぶりと比較すると、2000年代以降の荒木にある種の「やり尽くした」感を見てしまう人も多いのではないだろうか。だが、今回東京オペラシティアートギャラリーで開催された、「写狂老人A」を見て、彼のいまの仕事がそれどころではない状況にあることがよくわかった。
最初の部屋に展示されている「大光画」(50点)に、まず度肝を抜かれる。『週刊大衆』に連載中の「人妻エロス」シリーズを中心にした140×100センチの大画面のプリントが並んでいるのだが、ここまで生々しいヌードを、ほぼ等身大で、至近距離で見るという視覚体験はほかにない。観客はここで完全に荒木の写真世界に取り込まれていくことになる。以後、「空百景」、「花百景」、「写狂老人A日記 2017.7.7」、「八百屋のおじさん」、「ポラノグラフィー」、「非日記」、「遊園の女」、「切実」とほぼすべて「最新作」が並ぶ。だが、そのなかで最も衝撃的だったのは、1964年の電通写真部時代に制作された「八百屋のおじさん」と題する、スケッチブックに写真を貼り付けた手作り写真集だった。銀座の路地裏で店を開く、眼鏡で金歯の中年の「おじさん」の「ネオレアリズモ」のドキュメントだが、同じアングルで撮影した写真を執拗に繰り返すなど、後年の荒木の写真集のかたちがすでに実践されている。このような作品は、これから先も発掘されてくる可能性がありそうだ。荒木の写真家としての潜在的な埋蔵量は、まさに計り知れないものがある。
展示の最後のパートは、これまで刊行された写真集を紹介するコーナーで、2017年現在の総点数は520冊に達している。この数字がどこまで伸びるのか、それを考えると気が遠くなってくる。

2017/07/08(土)(飯沢耕太郎)

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