2017年08月01日号
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artscapeレビュー

林葵衣個展 声の痕跡/Trace of voice

2017年08月01日号

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会期:2017/07/08~2017/07/16

KUNST ARZT[京都府]

画廊に入った途端、壁面に引かれた3列の赤い線が目に飛び込んできた。ぶにょぶにょとした不思議な線だ。どんな画材を用いているのかと思いきや、自分の唇に口紅を塗り、壁面に唇を押しつけて言葉を発しながら横移動したものだという。いわば唇の拓本、あるいは声の痕跡である。それを知ってから、以前に彼女の個展を見ていたことに気が付いた。その時も唇で描いた作品があったが、色はモノトーンだった。新作で口紅を用いたことにより、作品には生々しさと官能性が加わったように思う。筆者は制作風景にエロチックな興味を覚えたが、画廊のウェブサイトにリンクされた動画を見ると、思いのほかハードな作業であった。それはさておき、出品作品のなかには父親との会話など、コミュニケーションをモチーフにしたものもあった。言葉、文字、会話は人が人たる所以と言うべき要素だ。その意味で彼女の作品は、人間の本質に肉薄する可能性を多分に秘めている。

2017/07/11(火)(小吹隆文)

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