2018年04月15日号
次回5月15日更新予定

artscapeレビュー

村山順子展「ケモノのキモノ 2」

2017年11月15日号

会期:2017/09/23~2017/10/7

ギャラリーギャラリー[京都府]

染織作家、村山順子の個展。団栗、エンジュ、桜、ヤマモモなどの自然の染料を用いて、《春のケモノ(クマ)》《冬のケモノ(冬毛のオオカミ)》《石のケモノ(ナキウサギ)》《川のケモノ(カワウソ)》という動物の毛並みのイメージに織り上げられた着物4点が展示された。草木染めの絹糸で織られた表面は起伏に富み、光の当たり方によってさまざまな表情を見せる。淡いグレーの中に茶褐色と沈んだ紺が潜み、黄土色と白の線が現われ、銀灰色の中に緑がかった水色が幾筋も走り、深い赤と直交する。目を凝らすたびに、名状し難い色の中に新たな色が現われ、百の、そして千の色彩が移ろっていく。それらは人間のまとう着物の形をしているが、表面の豊かな表情と光沢は野生の獣の毛並みを想起させ、人間でも獣でもない身体が立ち上がる。
「衣服」は人間と動物を弁別する装置のひとつだが、化学合成繊維が発明される以前、人間は、動物から剥いだ毛皮を身にまとい、自然から採取した繊維で布を織り、草木や土を染料に用いて布を染めてきた。人間は自然界と連続した「第2の皮膚」をまとってきたのであり、また、動物の毛皮や羽根を身につけて精霊や自然神に擬態する祭りや儀式、ヒトならざるものに変容する変身譚は世界各地に残る。村山の「ケモノのキモノ」シリーズは、そうした衣服の起源、「擬態」や「変身」という呪術的機能、皮膚/外界や人間/自然を隔てつつ連続させる「衣服」について再考を促す。それは、「高度な技術で織り上げられた衣服を身にまとうことで野生化、動物化する」という転倒を孕み、「繊細な野蛮さ」とでも言うべき魅力に満ちている。

2017/10/07(土)(高嶋慈)

2017年11月15日号の
artscapeレビュー

文字の大きさ