artscapeレビュー

《天神山のアトリエ》《貝沢の家》《萩塚の長屋》

2017年11月15日号

[群馬県]

高崎にて、藤野高志/生物建築舎のアトリエを訪問する。三度目だが、ものすごく植物や木が生長していて驚く。今回は彼の漫画による卒計のインタビューが目的である。やはり、図面や模型が一切なく、簡単な本を制作したという。内容は文明批評を伴う壮大な建築と自然の物語である。ほかに巨大な油絵、インスタレーションを燃やす行為もあったことを知る。なお、この漫画は事務所のHPで閲覧可能だ。続いて、藤野高志による実家のリノベーション、《貝沢の家》を見学した。長い時間をかけただけに、とんでもなくややこしく、複雑な、新築では絶対に生まれない空間の質を醸成していた。もとはごく普通の家なのだが、新しさと古さがシームレスにつながり、工事中/解体中にも見える建築に変身した。そして《萩塚の長屋》を再訪した。地方都市ゆえに、駐車場を2台分ずつ確保する集合住宅であり、中庭は視線が交わらないよう計算しながら、竹を植える。この一角に入る前衛的なガーデニング屋、ACID NATURE 乙庭が植栽を担当したという。藤野のアトリエも、こことのコラボレーションで植物を選定していたことが判明した。

写真:上=《天神山のアトリエ》 中=《貝沢の家》 下=《萩塚の長屋》

2017/10/27(金)(五十嵐太郎)

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