artscapeレビュー
『三宅一生──未来のデザインを語る』
2013年05月01日号
「プリーツ・プリーズ」「A-POC」などで知られるファッション・デザイナー、三宅一生が自分の仕事やデザインについて語った言葉をまとめた一冊。本書のベースとなったのは2007年にNHK教育テレビで放送された同名の番組「三宅一生──未来のデザインを語る」だという。つまり当時行なったロングインタビューを軸に構成されたもの。そのためか特別DVDが付録としてついている。デザインへの思いや出会い、作品(ファッションショーの風景)、三宅が設立に関わったデザインミュージアム「21_21 DESIGN SIGHT」の誕生から三宅自身がディレクションした展覧会のことなど、本とDVDはほぼ同様の内容となっている。ただ、やはり映像のもつインパクトは大きく、DVD映像は三宅の言葉(活字)をよりリアルなものに感じさせてくれる。
「ぼくは人間と服の関係を考えていました。そして「一枚の布」の発想にいたったのです。着物は、ゆるみがあって、空間が大切で、そこから学んだことはあります。しかし日本の着物だけがそうなのかと思ったら、インドを見ても、アフリカを見ても、一枚の布地を羽織っていて、それがものすごく美しい。これは世界共通なのではないか、と思ったのです。肉体と布の間に自分自身がつくる空間というのがあるはずなんだ、と。これをぜひ自分の仕事のしかたにしようと考えました。」(本書、44頁)[金相美]
2013/04/12(金)(SYNK)