2021年12月01日号
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artscapeレビュー

Chim↑Pom「PAVILION」展

2013年05月01日号

会期:2013/03/30~2013/07/28

岡本太郎記念館[東京都]

死を扱うと、Chim↑Pomは生き生きする。そして、彼らが死を観念としてばかりではなく、ひとつの現実として扱うとき、彼らの躍動は何かある真実に触れてしまう。そんなことが希に起こる。そのとき、出来事は事件となる。「事件」といっても、法に触れるかどうかといった話ではない。「PAVILION」展で決定的に重要な作品は、岡本太郎の遺骨を展示した《PAVILION》だろう。真っ白い光を放つディスプレイのなかに、掌に載るくらいの小さな骨が、まるで宝飾でも展示しているかのように、飾られている。岡本を骨として見るという、なんともあっけらかんとしたあけすけな仕掛けは、世界を理想化されたものあるいは美化されたものとしてではなく、ひとつの生命の運動として見るよううながしてくる。この作品を含めた展示全体にそうしたベクトルが感じられた。とくに再制作された《BLACK OF DEATH》は、自然のエネルギーに満ち満ちていると感じさせられ、強いインパクトを受けた。最初につくられた際には濃厚だったいたずら的雰囲気が希薄だったことも功を奏していた。それによって、Chim↑Pomたちの誘導で空を黒くしてしまうカラスの群れは最初のものより迫力が増しているように見えた。そこに、人間の生活の背後で普段は隠れているはずの非人間的な自然界の相貌が立ち現われた。それは恐ろしく、美しかった。岡本一人の死は自然の運動のなかのひとつのモメントであり、しかしその死も包み込んで、運動は休まず続いてゆく。Chim↑Pomが岡本太郎の死に触れて、新しい渦巻きをつくって見せた。これもまたひとつの自然の運動である。とすれば、その運動を観客の前に開示して見せたということこそ彼らが起こしている本当の事件なのである。

2013/04/21(日)(木村覚)

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