2021年09月15日号
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artscapeレビュー

カリフォルニア・デザイン 1930-1965──モダン・リヴィングの起源

2013年05月01日号

会期:2013/03/20~2013/06/03

国立新美術館[東京都]

ミッド・センチュリーを中心に、1930年から1965年までのカリフォルニアで展開したデザインを紹介する展覧会。ロサンゼルス・カウンティ美術館で開催された「California Design, 1930–1965: "Living in a Modern Way"」展」(2011/10/1~2013/6/3)の日本展である。展示は四つの章から構成されている。第1章「カリフォルニア・モダンの誕生」では、1920年代の人口増とともに住宅や家具への需要増加のなかから生まれたカリフォルニア独自のデザインの誕生。第2章「カリフォルニア・モダンの形成」では、第二次大戦を経て民生品に転用されるようになった新たな素材や技術とデザインとの関わりが取り上げられている。チャールズ&レイ・イームズのFRPや成形合板を使用した仕事はそのひとつの典型であろう。また、復員兵は無償で教育を受けることができたそうで、もともと美術や工芸、デザインに関わりのなかった人々が、デザイン教育を受ける機会をえることができたのも、戦後のカリフォルニア・デザインの興隆に影響している。第3章「カリフォルニア・モダンの生活」では、人々の暮らしを中心として、住宅建築や家具、玩具や水着などのデザインが取り上げられている。東海岸と比べて温和な気候のカリフォルニアでは、屋内と屋外の境界が曖昧な住宅、プール付きの住宅が建てられ、海水浴やサーフィンはスポーツウェアに独自のデザインを生み出してきた。第4章「カリフォルニア・モダンの普及」は、雑誌、新聞、映画などのメディアを通じて世界に発信されていったカリフォルニアのデザインを紹介する。
 アメリカで企画された展覧会なので、日本人には文脈が分かりにくい部分もある。これを補うのが、入口で配られている小冊子である。展示は実物資料ばかりではなく、工芸家などへのインタビュー映像、同時代のCMやニュース映画を見ることができる。陶芸などの量産製品ではないオブジェを、デザインの文脈でどのように評価するのか難しい部分もあるが、展示品がいわゆるグッドデザインに偏っていない点もとてもよい。既存の可動壁を利用した会場構成は面白いが、その壁を背にした展示品も多い。広い会場なのだから、立体的なプロダクトはどの場でどの面からも見られるようにしてほしかった。
 アメリカの文化はさまざまな側面から戦後日本の生活に影響を与えてきた。それにもかかわらず、日本のデザイン史においては、ヨーロッパのデザインに比べてアメリカのデザインはこれまで重視されてこなかったように思う。手元にあるデザイン史のテキストをみても、アメリカに関する記述は限定的である。まして、イームズ夫妻や一部の建築家の業績を除いては、カリフォルニアのデザインに焦点があてられることは稀であった。その意味で、今回の展覧会はとても刺激的な試みなのである。[新川徳彦]

2013/04/10(水)(SYNK)

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