artscapeレビュー

游谷 上出惠悟

2013年05月01日号

会期:2013/04/08~2013/05/05

Yoshimi Arts[大阪府]

130年以上の歴史がある九谷焼の窯元の六代目であり、個人でも活動している上出惠悟。その作品は、九谷焼の伝統に現代の感性を融合させたものだ。彼はディレクター的立場で制作を行なっており、実制作は主に工房の職人が行なっている。ただし、本人が絵付けをした作品もあるので、臨機応変な制作スタイルと考えるべきだろう。本展では、皿、茶碗、盃、蓋物、壺など20点以上が出品された。映画のカメラワークのように一連のシークエンスを描いた長皿の連作、高蒔絵のように盛り上がった金色の梅文様で埋め尽くされた髑髏の菓子壺、金継で富士の模様を描いた花詰の大皿……。どの作品にも遊び心に満ちた歴史と現代の対話が感じられるのが興味深い。シミュレーショニズムのようにすかした態度ではなく、ごく自然に過去を参照できるのがこの人の強みだ。

2013/04/08(月)(小吹隆文)

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