2021年10月15日号
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artscapeレビュー

中谷宇吉郎の森羅万象帖 展

2013年05月01日号

会期:2013/03/07~2013/05/30

LIXILギャラリー大阪[大阪府]

科学者また随筆家としても知られる中谷宇吉郎(1900-62)の、雪氷研究を中心とする業績を、写真、スケッチ、科学映画等の資料を通じて紹介する展覧会。会場の随所にちりばめられた宇吉郎の言葉から、生涯の師・寺田寅彦から学び得た科学研究に対する姿勢、自然への対峙のしかたについても看取できる。なかでも必見なのは、天然および人工雪の結晶の写真アルバムである。宇吉郎は、「観察の武器」として写真を多く用い、3,000枚にもおよぶ結晶の写真を撮影したという。どれひとつとして同じものがない、雪の結晶の美しさに目を見張る。一人の科学者が自然美を理解しようと積み重ねてきた真摯な営為は、私たちに科学と芸術の合流点を想起させる。科学者と芸術家が創造的な仕事をするプロセスは、よく似ているからだ。前者は自然の法則を解き明かそうと、雪の結晶のようなごく小さな部分を調べ尽くして、一般的な規則性を導き出す。また、後者も同様に自然をお手本としながら、作品の細部ではなくて、全体的な構造を問題とする。さらに、自然にみられる美的秩序・プロポーションは芸術家たちの造形の源泉となってきた。宇吉郎は形の「うつくしくない」結晶をも愛したという。それは、科学者が自然のなかから対称性や法則性を引き出そうとするとき、不完全/非定形なものに着目する態度をよく表わしている。造形における美の原理と今日的な「形の科学」についての示唆に富む展覧会だ。[竹内有子]

2013/04/12(金)(SYNK)

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