2022年01月15日号
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artscapeレビュー

宮沢賢治 詩と絵の宇宙 雨ニモマケズの心 展

2013年09月01日号

会期:2013/07/13~2013/09/16

世田谷文学館[東京都]

宮沢賢治の没後80年を記念した展覧会。賢治直筆の手紙や葉書、絵本の原画をはじめ、賢治の童話を題材とした絵本の原画や挿絵が展示された。
その原画や挿絵を描いたのは、いわさきちひろ、スズキコージ、田島征三、司修、堀内誠一、棟方志功、矢吹申彦ら錚々たる面々。とりわけ興味深かったのは、そのなかに高松次郎、中西夏之、李禹煥も含まれていた点である。前者のクリエイターたちが描いたのは具象的で写実的な絵画であるのに対し、後者の現代美術家たちが見せたのはあくまでも抽象画。曲線が入り乱れていたり、色が重なっていたりしているだけなので、一瞥したところでは、どこが宮沢賢治の物語と照合しているのか、まったくわからない。抽象化したのだから当然と言えば当然だが、あまりにも超然としたその構えには、ある種の潔さすら感じる。挿絵やイラストレーションとは異なる現代美術の矜持ここにありということなのだろうか。
ただ、抽象化が悪いとは言わないが、これではあまりにも芸がないのではなかろうか。池田龍雄や中村宏、あるいは桂ゆきといった先達がすぐれた絵本の原画や挿絵、ないしは童画を描いていたことを考えると、現代美術家といえども、いやだからこそ描くことができる絵は十分にありうる。ジャンルの問題というより、描き手が潜在させている芸の幅の問題ではないか。

2013/08/11(日)(福住廉)

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