artscapeレビュー

Fantabulous: Day Starter Exhibition

2014年09月01日号

会期:2014/07/10~2014/08/02

ondo gallery&product[大阪府]

Day Starterは、アーティスト、笠井由雅子とディレクター、植田浩嗣の二人が2000年に立ち上げたユニットである。「Taking a lesson from the past(温故知新)」をテーマに、オリジナルのイラストレーション・プロダクトの製作、販売にはじまり、アパレルブランドとのコラボレーションや、ミュージシャンのアートワーク、企業の広報や広告など、その活動は多岐にわたる。この度、彼らの作品集『Fantabulous』(ondo、2014)の出版記念展が行なわれた。20種類のオリジナル・パターンからなる作品集は、そのまま本として手元に置くもよし、一枚一枚切り離して飾るもよし、折りたたんで手紙として送るもよし、という一冊になっている。会場には、各ページのパターンと、それを一部に使った切り絵作品が展示されている。
それにしても、「温故知新」とはあまりに漠としたテーマではないか。とはいえ、「故」は50年代という特定の時代に設定されている。ポップカルチャーの全盛期、享楽的な消費文化が花開いたあの頃である。それを、「新」しく、彼らの感性で解釈し直すということであろう。今回の作品集に収められたパターンのモチーフは、葉っぱや花、鳥、瓶や窓、楽器などいずれも身近なものばかりで、それらが幾何形体をもとにした単純でわかりやすいかたちに落とし込まれている。ひとつのパターンにはわずかな色数しか使われていないが、その2-3色がたがいに響き合う。そして、一般的には低品質とされる軽オフセット印刷を用いることで印刷面の色ムラ、インクのかすれやつぶれなどの揺らぎが生じている。一つひとつの要素はたしかにフィフティーズのプロダクツさながらではあるが、それらの要素がより丁寧により繊細に調整されて落ち着いた調和をなしている。彼らの「温故知新」は、アレンジでもカヴァーでもない。どこかで聴いたことのあるような曲、しかしよく聴くと初めて聴く曲、だからこそ心地よく安心して楽しめる曲といったところであろう。[平光睦子]



ともに、展示風景

2014/08/01(土)(SYNK)

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