2021年09月15日号
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artscapeレビュー

グラフィックトライアル2014──響。ひびき

2014年09月01日号

会期:2014/06/07~2014/08/24

印刷博物館P&Pギャラリー[東京都]

今年で9回目のグラフィックトライアル。解説によれば今年のテーマ「響」は「音や声が空気に乗って伝わること」「音が響くように作用が及ぶこと」だという。参加デザイナーは、浅葉克己、水野学、長嶋りかこ、南雲暁彦らの四氏。グラフィックデザイン界の重鎮・浅葉克己のトライアルは、NASAの探査機が高解像度カメラで撮影した火星の地表と自らの書を組み合わせたグラフィック。墨絵のようなモノクロームの写真と薄墨を滲ませたロゴ表現に銀を用いることで、階調豊かなモノトーンの表現を実現している。水野学は「平和の響き」を青い空と白い鳩とで表現。濁りのない透明感ある青空の表現を試行した結果、空は版を重ねるよりもシアン版1版のみを特色に変えて刷った表現が一番良かったという話は面白い。他にフィルムやデジタルで撮った写真の印刷再現性を試みている。長嶋りかこのトライアルは、黒の質感表現。鉛筆、絵の具、マーカー、ボールペンなど、素材によって異なる黒のマテリアル感を出すために、今回のトライアルのなかでは一番多くの版を重ねている。フォトグラファー南雲暁彦のトライアルは風景写真。ただしオリジナルのプリントを再現するのではなく、フォトグラファーが撮影現場で感じた色につくり込むことを目指す。プリンティング・ディレクターは現場を見ていないので、フォトグラファーの意図を解釈しながら、版を設計してゆくことになる。「響」という言葉は今回のトライアルのためのテーマである同時に、デザイナー、フォトグラファーの表現とプリンティング・ディレクターの技術との響き合いでもあるという印象を受けた。[新川徳彦]

2014/08/24(日)(SYNK)

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