2021年09月15日号
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artscapeレビュー

core of bells『子どもを蝕む“ヘルパトロール脳”の恐怖』(「怪物さんと退屈くんの12ヵ月」第八回公演)

2014年09月01日号

会期:2014/08/20

Super Deluxe[東京都]

開演前、会場は入口の前に押し込められた観客で溢れていた。観客はあらかじめ「ゲームタイトル『ヘルパトロール』」と記された指示書を受付で渡されていた。そこには観客が「鬼」チームと「罪人」チームに分かれて戦うことなど、ゲームのルールや進行が事細かに書かれてある。しかし、いくら読み返しても頭に入らない。複雑なのだ。しばらくすると、青い鬼と赤い鬼が、遅れて顔が半分赤く半分青いミックスの鬼が現われ、ゲームの説明を始めた。軍手が渡される。内側に「鬼」か「罪人」かが記されているという。見ると「鬼」だ(知人たちと確認した限り、すべて「鬼」だった)。ゲームの開始が告げられる。閉ざされたエリアに入ると、会場のSuper Deluxe内に迷路と六カ所の部屋ができている。観客は、ルールに従い暗号を探し読み、メモをとる。「鬼」は「罪人」の振りをし、「罪人」は「鬼」の振りをする(そう指示書に促されていたままに)。昼の時間が終わり夜になる。暗い中で部屋に閉じ込められ、その場で足踏みするよう指示される。目を瞑って結構長い間歩く(夜なのに歩かされている!)。足踏みのあいだ、結構複雑なやりとりがなされているはずだが、目を瞑っているので何が起きているのかはよくわからない。この昼の時間と夜の時間が5-6回繰り返された。そして新たな昼が来るたびに、半透明パネルでできた部屋はひとつずつ解体される。最後は、大きな部屋に観客全員が集められ、夜の時間を過ごす。つまり、ひたすら足踏みさせられる。ただでさえ暑いのに、足踏みの疲労でくたくたになるが、足踏みの音はやまない。「ようやくか!」と心で叫び、昼が訪れる。照明で周囲が明るくなった。すると、core of bellsのメンバーたちは、それまで何事もなかったかのように、このシリーズで毎回行なっているアフター・トークを始めていた。観客は、ゲームがよくわからぬまま終了したことはわかるのだが、だからといってこの取り残された状況がつかめないと、怪訝な表情で眉間にしわを寄せたまま、一文字に並びトークを続ける彼らを見つめる。けれども、彼らのトークの話題はラーメン屋に行った行かないとか身内の揉めごとばかりで、聞いてもいっこうに当を得ない。狸に化かされた、なんて言い回しがあるが、まさにそんなぽかんとした空気が会場を埋め尽くした。「煉獄プランナー」の肩書きで参加した危口統之は、ゲーム中の指示をマイク越しにずっと行なっていたけれども、彼の参加は今回のアイディアに大きく作用しているようだった。それにしても、観客は目を瞑ってはいけなかったのだ。目を瞑っては何が起きたのかも何が起きなかったかもわからない。〈観客にもかかわらず目を瞑ってしまう〉というこの事態を引き起こしたところに、今回の上演の成功はあったというべきだろう。見るために目を瞑り、目を瞑ったがために見られなかったというこの矛盾、絶望! 観客を巻き込む仕掛けの施された舞台上演は最近多いが、観客を絶句させる力の点で今作は図抜けていた。

2014/08/20(水)(木村覚)

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