artscapeレビュー
プレビュー:わたしは、春になったら写真と劇場の未来のために山に登ることにした
2016年07月15日号
会期:2016/08/26~2016/08/28
アトリエ劇研[京都府]
京都を拠点に活動する同世代の演出家と写真家、それぞれ2組が、演劇/写真/ダンスの境界を交差させ、対話を通じた共同制作を行なう2本立ての企画。2013年~15年に毎年開催されたDance Fanfare Kyotoでの「×(カケル)ダンス」(御厨亮企画)で試みられた、異ジャンルのアーティストによる共同制作を引き継ぐ試みである。
「身体の展示」として展覧会も行なうダンサー・振付家・演出家の倉田翠(akakilike)は、「家族写真」というフォーマットを足がかりに、セルフ・ポートレイトを中心に制作する前谷開と組む。一方、俳優の言葉と身体の関係性に取り組む演出家・和田ながら(したため)と、写真イメージと物質の関係性を考察する守屋友樹は、ある「登山の経験」の共有をパフォーマンスに仕立てる予定。前谷は、カプセルホテルの内部の壁に落書きしたドローイングとともに撮った全裸のセルフ・ポートレイトや、同居人の後ろ姿になりすまして撮ったポートレイトなど、「私性」の中に身体的行為の痕跡やフィクショナルな要素を混在させた写真作品を制作している。また、守屋は、ある固有の山や岩が写真という媒介を経ることで、形態や色彩といった視覚的情報に置換され、布やネオン管といった物体/光を用いた見立てへと空間的に増殖していくような展示をつくり上げている。それぞれに身体性や空間性への意識を見せる2人の写真家が、演劇やダンスの時空間とどう関わり合うのか、期待される。
2016/06/27(月)(高嶋慈)