artscapeレビュー
ちはやふる 上の句/ちはやふる 下の句
2016年07月15日号
小泉徳宏監督『ちはやふる 上の句』。広瀬すずが走るだけで、いまの彼女しか発しないオーラを生むが、他の俳優陣もその人にしかない個性と役割を発揮し、素晴らしいアンサンブルを奏でている。その団体戦こそが映画のテーマでもあるのだが。競技かるたのスピード感のある対決を映画的にカッコよく描いた手腕も見事だ。立て続けに、『ちはやふる 下の句』を見る。作品のトーンはだいぶ変わり、それぞれがなぜかるたをするのかを自問し、いったんはチームがバラバラになるが、最後は個人戦もつながりが大事なのだと気いて成長する。両作品が相互に補完する関係をもつ。後編から新しく登場した個人主義を貫く若宮詩暢役の松岡茉優が圧倒的な存在感だった。この映画は、表情の変化と手の動きで多くのことを伝えている。
2016/06/01(水)(五十嵐太郎)