artscapeレビュー
プレビュー:アンキャッチャブル・ストーリー
2017年06月01日号
会期:2017/06/11~2017/07/17
瑞雲庵[京都府]
路上で見つけた拾得物を丁寧に配置し、言葉と組み合わせるなどした作品で知られる牛島光太郎、私小説的な風景画(しかし本当に自身が体験したものかは謎)を描く田中秀介、ふと出会った「わからない」言葉やイメージから、ドローイング、写真、旅、リサーチ、パフォーマンスを展開する阿児つばさの3人展。企画者はキュレーター/アートコーディネーターの武本彩子。現代は無数の発言、発信、ストーリーが世の中に溢れているが、SNSの炎上のように、発信する側も受け取る側も言葉を安直に扱い、無残にもてあそぶ傾向が広まっている。「わからない」ものを簡単に「わかる」ようにしない彼らの作品を通して、いま、われわれが取るべき態度について再考しようというのが本展の趣旨である。シリアスなテーマ設定だが、3人の作家は企画者の意図ですら、するりとかわしてしまうかもしれない。真面目に、でも肩をこわばらせずに彼らのメッセージを受け止めたい。
2017/05/20(土)(小吹隆文)