artscapeレビュー
三島喜美代展
2017年06月01日号
会期:2017/05/02~2017/05/28
現代美術 艸居[京都府]
ひもでくくられた古新聞・古雑誌、平積みされた少年漫画、商品のロゴマークが入ったダンボール箱、空き缶を満載したゴミ箱など、現代の物質文明を想起させるモチーフをテーマにした陶オブジェで知られる三島喜美代。近年は国際的に評価が高まっている彼女が、久々に地元の関西で個展を開催した。三島はもともと絵画と新聞紙のコラージュを併用した平面作品を制作していたが、1970年代から陶オブジェへと移行した(鉄や樹脂の作品もある)。彼女は陶芸を選択した理由を「やきものは割れる。その不安感が面白い」と言い、古新聞・古雑誌や空き缶といったモチーフは「家の近所の見慣れた風景で、面白いと思った」と述べている。このことから三島は直感的な作家だと類推できるのだが、それでこれだけ一貫性のある質の高い作品を残してきたのだから、美術家の直感恐るべしである。また、本展で興味深かったのは一番奥の部屋に展示されていた《Film 75'》という作品だ。夫を撮影した35ミリネガフィルムをシルクスクリーンでプリントしたフィルム状のオブジェだが、三島の作品にしては珍しくプライバシーに触れている。この作品は存在すら知らなかったので、見られてラッキーだった。
2017/05/05(金)(小吹隆文)