artscapeレビュー
田中梢個展 遠くにいても近くにいる様な
2017年06月01日号
会期:2017/04/17~2017/04/22
ギャラリー白3[大阪府]
砂丘越しに見える海や、崖沿いの海岸を主題にした油彩画を出品。作品の特徴は大胆な構図だ。画面を斜めに横切る砂丘、垂直に切り立った崖、海の水平線が、ベージュ、黒、青の色面分割と共に描かれている。つまり、具象画でありながら抽象画の要素も併せ持っているのだ。それでいて風景の中には人々の姿も小さく描かれており、どこか親密な雰囲気が感じられる。作者によると、作品の主眼は「風景の中に偶然写り込んだ人々を描くこと」。旅先では、ほんの一瞬出会った人から忘れられない印象を受けることがあり、それが日常生活では解けなかった疑問のヒントになる場合がある。そうした自分と他人の距離感や関係を表現したいと思っているのだ。作品のサイズはどれも小さく(20号と3号)、必要最小限の要素で表現されている。それゆえ観客はぐっと近づいて作品を覗き込むことになるが、それも作者の狙いであろう。
2017/04/17(月)(小吹隆文)