artscapeレビュー

高橋涼子 個展 HAIR(=)COMPLEX

2009年10月01日号

会期:2009/09/02~2009/09/26

studio J[大阪府]

毛髪、特に女性の髪は、女性性や情念のメタファーとして扱われることがあるため、男性としては若干の恐怖を覚えるモチーフである。また、お菊人形などホラーの題材としても定番である。高橋は人毛を素材にした立体作品を作り続けているが、女の情念やホラーをテーマにしているわけではない。彼女にとって髪とは、容姿を飾ることでコンプレックスを矯正する道具であり、美への欲望の表われなのである。本展の出品作では、ワンピースの内部に毛髪の玉が詰まった作品や、コルセットの紐が毛髪に差し替えられた作品がその典型であろう。男性の私は、髪とコンプレックスといえばハゲしか思いつかない。彼女の作品から感じたのは、コンプレックスよりもエゴイズムである。欲望の源であるエゴイズムの象徴としての毛髪。作者の意図からは外れてしまうが、個人の勝手な解釈としてはその方が座りが良かった。

2009/09/04(金)(小吹隆文)

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