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光 松本陽子/野口里佳

2009年10月01日号

会期:2009/08/19~2009/10/19

国立新美術館[東京都]

画家・松本陽子と写真家・野口里佳による二人展。「光」を大きな共通項としているとはいえ、それぞれ別々の空間を構成しているため、個展を同時に催したといったほうがいいのかもしれない。さまざまなピンク色がモコモコしている松本の絵画は、茫漠とした色の錯綜を好む日本の現代絵画のお手本のようだが、いかにも大衆が好みそうな満開の桜のようでもあるし、ピンクハウスのスイートでファンシーな洋服みたいでもある。つまり、イメージとしてとらえることができる。その反面、野口はイメージとしてとらえがたい光の特質を巧みに作品化していた。市販のピンホール・カメラによって撮影された《太陽》のシリーズは、文字どおり太陽を印画紙に定着させようと試みた写真だが、とうぜん真っ白に感光してしまうから、私たちは形象化された太陽のイメージを連想することはできても、そこには白い空虚が残されているにすぎない。表象することは光を必要不可欠とするが、光そのものは表象することができない。光の反イメージ、ないしは表象不可能性という原則を、もっとも簡潔明瞭なかたちで提示した傑作だ。

2009/08/31(月)(福住廉)

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