artscapeレビュー

犬と猫と人間と

2009年10月01日号

会期:2009/09/10

映画美学校第1試写室[東京都]

飯田基晴監督によるドキュメンタリー映画。日本で一日に3,000匹、年間では30万頭の犬と猫が処分されているという現実を知らずにいた監督自身が、さまざまなアプローチから「犬と猫と人間」の実態に肉薄することで、その現実を身をもって学んでいく構成だ。行政の収容施設や民間の保護施設を訪ね、多摩川の河川敷で自発的に捨て猫の世話をしている人や、山梨県の「犬捨て山」、徳島県の「崖っぷち犬」を取材し、ついには動物愛護の先進国であるイギリスまで足を伸ばしていく行動力と、避妊手術や犬の訓練方法をめぐって行き違う見解をそのまま観客に見せる実直な態度のおかげで、厚みのあるドキュメンタリーになっている。私たち人間にとって言葉すら通じない「他者」とどのように共存していくのか、どうすれば両者にとっての「幸福」が可能なのか、ペットを飼っていようがいまいが、すべての人たちがそうした根源的な問いを考えることができる映画である(10月よりユーロスペースにてロードショー、その後全国で順次公開される予定)。

2009/09/10(木)(福住廉)

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