artscapeレビュー

ヤスミン・ゴデール『Singular Sensation』

2009年10月01日号

会期:2009/09/23~2009/09/24

青山円形劇場[東京都]

なんかファッション誌のモデルみたいな痩せた男の子だなと思ったら、突然、舌を「ペコちゃん」みたいに唇の端にぺろっと出した。冒頭のこのポーズがやっぱり雑誌で見かけるクラブでのスナップみたいで、チープでリアル。センスあるなあというのが最初の印象。女3人と男2人。ひとりの小さな妄想が周りを巻き込む遊びへと発展してゆく、その繰り返し。軽い身体が繰り広げる、チープなイメージ断片の乱射。パーティ・ピープルの悪ふざけだったら、快快(のある部分)と似ているかもと連想するが、違うのは快快が観客とのコンタクトをつねに図ろうと画策しているのに対して、この舞台は、悪ふざけのダンス作品化が目指されているところだ。とくに70分ほどの公演のラスト15分、ゼリーや絵の具が出てきて、ドロドロ、グチャグチャがどんどんエスカレートする。それに反比例して、見ているこっち(少なくともぼく)は醒めてしまった。なんであんなにはしゃげますかね?ドラッグもなく(ぼくの目がメディアにやられているだけですかね)、と思ってしまった。「上げる」ことで舞台をつくる常套手段を用いるなら、なぜ上がるかの理由が必要だし、上がった自分が他人(観客)と何を取り交わそうとするのかについて明確なアイディアが必要なはずだろう。

2009/09/24(木)(木村覚)

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