artscapeレビュー

白と黒(「武満徹の映画音楽」より)

2009年10月01日号

会期:2009/08/19~2009/08/25

ラピュタ阿佐ヶ谷[東京都]

1963年制作、堀川弘通監督による社会派サスペンス映画。主演の小林桂樹のほか、仲代達矢、乙羽信子、大空真弓、淡島千景、井川比佐志、西村晃と東野英二郎(新旧水戸黄門の共演!)などがそれぞれ味わい深い演技を見せ、さらには松本清張や大宅壮一といった知識人もチョイ役で出演するなど、豪華絢爛な出演陣が観客を魅了する。おまけに、当時の社会風土を織り交ぜながら、物語を二転三転させる骨太の脚本が、いかにも渋い。2時間弱の映画であるにもかかわらず、ひじょうに密度の濃い時間を経験できた。企業とタイアップしたほとんど広告のような薄っぺらいモノガタリが横行する昨今、こうした硬派な物語にこそ、エンターテイメントの真髄があるにちがいない。

2009/08/24(月)(福住廉)

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