artscapeレビュー

遠藤一郎エキシビジョン おいらとゆかいな野郎ども

2009年10月01日号

会期:2009/09/09~2009/09/13

Art Center Ongoing[東京都]

遠藤一郎企画によるグループ展。遠藤にゆかりのある「ゆかいな野郎ども」数十人が、遠藤とじゃんけんをして勝った順番に場所を決めながら展示をしていった。ある種のアンデパンダン展だということでいえば、昨年に清澄白川のMAGIC ROOM?で催された「全員展!!!!!!!!」が必然的に思い出されるが、展示の密度や参加人数では圧倒的に下回るとはいえ、今回のほうが「全員展!!!!!!!!」より見応えがあった。若い自己表現が爆裂するなか、ひときわ異彩を放っていたのが、海野貴彦。抽象的で無機質なブロックだけを集積して無限に広がる都市空間を描写したかのような画面は、静謐さと狂気が紙一重で共存しており、周囲の喧騒がその異常性をよりいっそう引き立てていた。さらに、もうひとりおもしろかったのが、遠藤の想定外で同展に勝手に参加したやつ。彼もしくは彼女は、身元を明かさないまま、会期中にわたって会場にファクスによる同展への応援メッセージを送り続け、遠藤は律儀にそれらを一枚一枚会場に貼りつけていた。24時間テレビに送られてくる応援ファクスのようなアニメチックなイラストが描かれた紙面を見てみると、そこには「混欲アパートブログを見てPCの前でジャンプしました!」(「混欲」ではなく「混浴」が正しい)、「fight the future!」(遠藤はそんなフレーズはいったことがない)といったメッセージが描きつけられている。絵のタッチをその都度その都度変えながら、しかもTシャツのプリントを皺に沿ってきちんと描くなど、かなり芸が細かい。シニカルなニュアンスに「こいつ、むかつくわー」と遠藤はこぼしていたが、そういいながらも、わざわざ「ゆかいな野郎ども」に加えているところが、遠藤一郎の器量であり、そこに「未来」があるのだろう。

2009/09/12(土)(福住廉)

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