artscapeレビュー
一丁倫敦と丸の内スタイル展
2009年10月01日号
会期:2009/09/03~2010/01/11
三菱一号館[東京都]
東京は丸の内の三菱一号館の竣工を記念して催された展覧会。大名屋敷が立ち並ぶ江戸時代から近代的なオフィスビルヂング街へと変貌を遂げていく歴史をパネルや模型で解説するとともに、かつての三菱一号館を写真や資料から復元する試みを記録した映像などを展示した。思いのほか充実した展示内容で、たいへん見応えがある。オフィスで使われていたデスクや椅子をはじめ、ビジネスマンのファッションや文具、はては工事現場から発掘されたかつての建築材にいたるまで、多角的かつ網羅的なアプローチによって集められた「もの」の集合が、じつに楽しい。そして本展には「一号館アルバム」と題された写真展が組み込まれていたが、ここで抜群のセンスを発揮したのが、梅佳代だ。一号館の建設現場で労働する職人たちの姿をとらえた500枚を超えるポートレイトを一挙に発表した展示は壮観以外の何物でもない。それらをフォトフレームや単管を組み合わせた仮設足場、記念撮影に使われる顔抜き看板などによって見せる展示手法も気が利いている。竣工してしまえば忘れられてしまうが、都市の再開発はつねにこうした手仕事を生業とする職人たちによって成し遂げられているという事実を、彼らの生き生きとした表情によって伝える、すぐれたドキュメンタリーである。
2009/09/01(火)(福住廉)