artscapeレビュー

神村恵+手塚夏子『毛穴の高気圧』(実験ユニット第4弾)

2009年10月01日号

会期:2009/09/26~2009/09/27

Art Center Ongoing[東京都]

実験ダンス界(?)の孤高の女王・手塚夏子とミニマル傾向のダンスのなかでもっとも注目されている神村恵とが実験公演を重ねている。今回は、2人はテーブルを挟んで「手塚さんて緑色好きだよね」などと他愛のない会話をし(色をめぐって服の話、バッグの話、シャンデリアの話などと続く)、3分ほどでブザーが鳴ると、その内容を(一字一句同じというのではなく)何度も繰り返す。手塚の「プライベートトレース」が過去の自分(あるいは他人)の映像をトレースしたなら、これは話のトレース。ひとが言葉を発するときに発生しているはずの厖大な出来事の束。過去を思い返し、言葉を選び、その言葉がどう他者に届いたか確認し、言葉を修正し、そのあいだに、あせったり、くいさがったり、とぼけたり、それもわざとだったりたまたまだったり体が動く。あるエピソードが2回、3回と語られると同じ内容なのに微妙な言い回しの変更や言い足しなどが発生する(台本のある演劇とは異なるところだ)。そのズレに、ひとの振る舞いに普段は隠れている多様な可能性たちが見えてくる。喋っているあいだには、神村は手塚がよくする突発的な身体のつっぱりを起こしたり、手塚はある回では異常に暗く閉じた風で会話したりするのだがそのルールはよくわからない。とはいえ、会話(発話、言葉)に注目したことで、2人のダンスの可能性がぐっと広がる予感がした。

2009/09/26(土)(木村覚)

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