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2013年03月15日号のレビュー/プレビュー

so long! The Movie

大林宣彦監督によるAKB48の『so long! The Movie』の映像を見た。AKB48の楽曲は保守的なウェルメイドだが、彼女らをめぐるシステムは破壊的な前衛である。この映像は明らかに後者だ。3.11以後のもっとも重要な作品のひとつ、大林の映画『この空の花ー長岡花火物語』の続編と言うべき内容であり、もっと福島に寄りそうものだ。わざとらしい表現や演出などの手法もほぼ踏襲している。この文脈を前提とさせられるファンにとっては嫌いな作品だろうが、大林にこの「映画」をつくることを許した度量がすごい。

2013/02/26(火)(五十嵐太郎)

エル・グレコ展

会期:2013/01/19~2013/04/07

東京都美術館 企画展示室[東京都]

東京都美術館のエル・グレコ展を見る。誰が見てもすぐわかる有名なグレコのスタイルになる前の初期の絵画作品が興味深い。彼ですら、最初はいわゆる「グレコ」じゃないのだから、卒計くらいで個性を求めるのは難しいかもしれない。またウィトルウィウスの建築書への書き込みや、教会で建築と一体的に絵画を構想したという展示が興味深い。トレドを訪れたのはもう20年前である。学部の頃、スペイン美術史を聴講したのが懐かしい。

2013/02/26(火)(五十嵐太郎)

新井淳一の布 伝統と創生

会期:2013/01/12~2013/03/24

東京オペラシティ アートギャラリー[東京都]

東京オペラシティアートギャラリーの「新井淳一の布 伝統と創生」展へ。テキスタイルのデザインによって、被膜、伝統、素材と技術などのテーマを具体的に示す好企画である。理論と実践の対応を提示する1/1の実物をずらりと配置したり、テキスタイルによる空間のインスタレーションは、建築的にも面白い。それを空間化した会場の構成は、建築家の田根剛である。同時開催のproject Nでは、阿部未奈子の記憶と解体を伴う風景画も興味深い。

2013/02/27(水)(五十嵐太郎)

損保ジャパン美術賞展 FACE2013

会期:2013/02/23~2013/03/31

損保ジャパン東郷青児美術館[東京都]

「年齢・所属を問わず、真に力がある作品」を公募したところ、10代から90代まで1,275人の応募があったという。うち受賞作品9点を含む69点を展示している。ちなみにタイトルの「FACE」とは「Frontier Artists Contest Exhibition」の略称だそうだ。ザーッと見て、平面ならなんでもあるなと思った。油絵(+アクリル)から、日本画、版画、コラージュ、CGプリントまで、具象画も抽象画も、いまどきのチャラい絵も団体展系のシブい絵もなんでもあり。これらの価値基準はひとつじゃないはずのにどうやって審査し、優劣をつけたんだろう? きっと審査員のみなさんは神さまみたいな人たちなんだろうなあ。最初の部屋に9点の受賞作品が並ぶ。グランプリの堤康将はじめ、優秀賞の永原トミヒロ、近藤オリガ、田中千智、読売新聞社賞の高木彩らだが、続く非受賞者の作品とそう大差ないように思えた。むしろ俵萌子や室井公美子ら力のある抽象が受賞してないのが不思議なくらいだ。

2013/02/27(水)(村田真)

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トム・サックス展「ストア」

会期:2013/02/20~2013/03/04

8/アートギャラリー/小山登美夫ギャラリー[東京都]

ギャラリーの中央にデーンと屋台というかキャビネットみたいなものが置かれ、そこに本やらオブジェやらが並んでいる。底にはキャスターもついていて、いかにも素人が手づくりしましたっていうチープな感じだ。そこに並んでいるのは、自分のカタログや自作を印刷したトランプや宇宙空間でも遊べる磁石付のチェスといったエディションもの。これは自作のミニチュアを収納したデュシャンの「トランク」からの発想だろうが、このように屋台でアートを見せる(売る)という商売はありかも。

2013/02/27(水)(村田真)

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