2020年05月15日号
次回6月1日更新予定

artscapeレビュー

2014年05月01日号のレビュー/プレビュー

田河敬太 個展 in the room─ひきこもらねば─

会期:2014/04/08~2014/04/13

KUNST ARZT[京都府]

巻貝から人間の足が露出した小さな木彫作品で知られる田河敬太。彼の作品の背景には、自身が進学のため奄美大島から関西に移り住んだ際に感じた孤独感・疎外感と、かつて彼の身近に引きこもりがいたことが挙げられる。出品作品は木彫7点と巨大な金属製の巻貝が1点で、後者に作者自身が潜り込み、会場に置かれたパソコンを介して観客とコミュニケーションを取るパフォーマンスも行なわれた。画廊オーナーから聞いたところ、巻貝の内部は意外と心地よいらしい。子どもの頃に押入れで遊んだ感覚に近いのだろうか。筆者自身は引きこもりに関して無知だが、彫刻にせよパフォーマンスにせよ、足が露出している点にある種のサインを感じた。彼らは完全に外部との接触を拒否しているわけではない。むしろ望んでいるのでは、と。

2014/04/08(火)(小吹隆文)

フィンランド現代美術 はるかな大地の色とかたち

会期:2014/04/15~2014/04/26

楓ギャラリー[大阪府]

北欧のフィンランドから7名のアーティストが来阪、同国の現代美術を紹介した。作品は、版画、彫刻、ガラス、レリーフなど多彩で、どの作品にも大らかさと洗練が同居しており、日本の現代美術とは明らかに雰囲気が異なる。筆者のお気に入りは、トゥッカ・ペルトネンのフィンランドの情景から着想した木版画、アルマ・ヤントゥネンの盆栽を思わせるガラス作品、オッリ・ラトゥの素朴な風合いの木彫レリーフ。ほかにも国際的に活躍している作家が数名含まれており、彼らと街中の画廊で身近に接することができた。なお、本展の開催に当たっては、画家の森井宏青と山縣寛子の長年にわたる北欧との交流が背景にあり、本展出品作家のひとりでもあるオッリ・ラトゥがフィンランド側のキュレーターを務めた。

2014/04/15(火)(小吹隆文)

「指を置く」展 佐藤雅彦+齋藤達也

会期:2014/03/12~2014/04/26

dddギャラリー[大阪府]

私たちが展覧会に行って、グラフィック作品に「触れる」ことはほとんどない。本展は、グラフィックに指先を置いてみることから出発し、紙に表わされた内容と来館者の「指を置く」行為を通じて起こるインタラクションのありようを探求している。展覧会に来た人は、まず入口に設置された掲示とともに付されたウェットティッシュによって、手を拭くことを求められる。数々の作品には任意の点が示されており、そこに指示された五本の指のうちのある指を置くと、なんらかの力が作用して、図像がそれまでと違う解釈で認知されることになる。例えば、指定された点に指を置くと、二次元的表現ではないはずの異なる空間が創成されるように見える。置く行為によって、圧力がかかってバランスが変化したり、図像がよりリアルな表現に変容するように感じられたりする。身体の所作によって、メディア作品のなかに隠されていた、新しい表現が立ち現われるのである。こうした私たちの盲点を突くグラフィックの新しい表現は、佐藤氏の『任意の点P』(2003)、『差分』(2009)等の著書で実践されてきたもの。はっとさせられ、ううむと唸ってしまう展覧会である。[竹内有子]

2014/04/16(水)(SYNK)

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ねこ・猫・ネコ

会期:2014/04/05~2014/05/18

松濤美術館[東京都]

犬と並んで人間にとってもっとも身近な動物である猫。身近であるがゆえに絵画にもさまざまに描かれ、彫刻のモチーフにもされてきた。とはいえ、一口に猫が主題と言っても、画家や彫刻家たちの視点、モチーフに用いた文脈は多様である。猫を主題としたこの展覧会では、人間と猫との関わり方から美術と猫との関係を見る。そもそも猫は約1万年前のエジプトにおいて穀物を鼠の害から守るために家畜化されたもの。エジプト新王国末期にはオス猫は太陽神ラーの象徴として、メス猫は女神バステトの象徴として崇拝の対象とされた。序章「猫の誕生」に展示されているエジプト末期王朝時代のブロンズの猫のうち頭部のみのものは、ミイラにされた猫の頭部に被せられたものという。日本でも猫は養蚕の守り神とされる例があるようであるが、絵画では人との関係において描かれることが多いようだ。ただし、猫は人につかず家につくといわれるように、むしろ孤高の存在の象徴として描かれることもある(第一章)。美人とともに描かれた猫は気まぐれ、不可思議な存在の象徴であろうか(第六章)。「猫と鼠」は猫が家畜化されたときからの永遠のテーマである(第五章)。中国における猫の画題はまた異なる意味を持つ。猫は長寿を意味する「耄(もう)」と音を同じくすることから、富貴を象徴する牡丹や、やはり長寿を意味する「耋(てつ)」と音を同じくする「蝶」とともに吉祥の画題として描かれてきたという(第四章、第七章)。そうした画題の意味を読みながら作品を鑑賞するのも良いけれども、そのようなことを意識せずに見ても、さまざまな猫の絵が集った、猫好きにはうれしい展覧会である。「トムとジェリー」や「ドラえもん」「ゴルゴ13」「猫カフェ」まで登場する図録の解説も楽しい。ところで国芳ら浮世絵の猫がいないのは、同じ渋谷区の専門館に遠慮したのであろうか。[新川徳彦]


展示風景 *美術館の許可を得て撮影

2014/04/16(水)(SYNK)

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第2回 KYOTOGRAPHIE 国際写真フェスティバル

会期:2014/04/19~2014/05/11

京都文化博物館別館、京都駅ビル7階東広場、龍谷大学大宮学舎本館、ASPHODEL、誉田屋源兵衛 黒蔵、虎屋京都ギャラリー、無名舎、下鴨神社細殿、嶋臺ギャラリー、有斐斎 弘道館、アンスティチュ・フランセ関西、京都芸術センター、無鄰菴、村上重ビル、鍵善寮[京都府]

京都市内の歴史ある町家や近代洋風建築、神社、現代建築などを舞台に行なわれている大規模写真展。2回目の今年は、15カ所を会場に9カ国のアーティストが参加した。今年のテーマは「Our Environments 私たちを取り巻く環境」で、天体、動物、自然環境、都市、原発、ファッション、1950年代の日本、1960年代以降の日本の写真集などバラエティーに富む作品が展示されている。本展の魅力は作品と会場に大別されるが、作品では、高谷史郎がNASA撮影の火星の地表画像をもとにつくり上げた巨大映像、西野壮平が数千から数万のベタ焼き写真をコラージュしてつくり上げた世界9都市の鳥瞰図、ティム・フラックによる動物たちの肖像写真、広川泰士が1991~93年に制作した日本各地の原発を撮影したシリーズなどが、会場では、普段は入れない龍谷大学大宮学舎本館、下鴨神社細殿や、京町家(商家)の無名舎、誉田屋源兵衛などが印象的だった。市内を巡り、良質な写真作品を堪能しながら京都の建築遺産も味わえるのがKYOTOGRAPHIEの魅力だが、主催者の意図は十分に達せられていたと思う。また、昨年の第1回に比べて広報展開が充実していたのも特筆に値する。主催者(日仏混成チーム)の手腕は評価されるべきであろう。なお、KYOTOGRAPHIEの会期中にサテライトイベント「KG+」も同時開催中。両方を合わせると市内60カ所以上で写真展が行なわれている。

2014/04/18(金)(小吹隆文)

2014年05月01日号の
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