artscapeレビュー

2017年06月15日号のレビュー/プレビュー

チューリッヒ芸術大学

[スイス]

さらに郊外に移動し、チューリッヒ芸術大学へ。かつて都心にあったモダニズム的な校舎から移転し、現在は工場をリノベーションした巨大な建築を使っている。中心軸上に大階段とパフォーマンスもできる大踊り場が断続的に展開し、最後は屋上に到達する。大学の構内にあるデザインミュージアムでは、企画展を2つ開催していた。ひとつがスイスに来ようというキャンペーンのための観光ポスターを集めたものである。近代以降のデザインの流れも楽しめるのだが、ロベール・マイヤールが手がけたような美しい土木の風景もしばしば使われている。もうひとつが、操り人形展だった。ダダ、アヴァンギャルド、アドルフ・アッピアとの接点など、知らないことが多く、勉強になった。

写真:左下=アドルフ・アッピア 右上=観光ポスター展 右下2枚=操り人形展

2017/05/13(土)(五十嵐太郎)

MAAG AREAL

[スイス]

ギゴン&ゴヤーらが関わり、ビール工場をリノベーションした本屋(ヴェルフリのレコードがあった! どんな音がするのだろう?)やギャラリーの集合体、MAAG AREALを訪れた。さすがに天井高もあって、大規模な展示空間がいくつもある。若手の紹介もいろいろあったが、ファウスト・メロッティがよかった。特に華奢な抽象彫刻やオブジェが、石上純也をほうふつさせる。

写真:左=MAAG AREAL 右=ファウスト・メロッティ

2017/05/13(土)(五十嵐太郎)

《タメディア新本社》

[スイス]

坂茂のタメディア本社ビルは、土曜のためか、結局、内部に入ることができなかったのだが、ガラスの透明建築なので、1階の空間はよく見える。ただし、木造の架構はほとんど外には露出していないので、遠目にはわかりにくい。かろうじて玄関庇の下のみ、木の構造を直接見ることができる。なお、建物全体のヴォリュームや形態は、周囲との連続性を意識したものになっている。

2017/05/13(土)(五十嵐太郎)

スイス国立博物館

[スイス]

19世紀の様式建築である本館に対し、リベスキンド風の過激な造形による増築部分が昨年完成し、新旧の建築が対峙する。賛否両論があるようだが、日本の学生が歴史建築で何か提案すると、完全に守りに入って、新築を隠す方向にいくのと逆のデザインだ。国立博物館の常設も、ホワイトキューブではないインテリアゆえか、かなり攻めた空間展示デザインを導入していた。増築部分で開催されていた1917年のロシア革命の企画展は、冒頭と最後にアートや建築を紹介し、真ん中は歴史を振り返る。冒頭はロシア・バレエやロシア・アヴァンギャルドなどで、特にストラヴィンスキーによる「春の祭典」の自筆楽譜がカッコいい。最後はソビエトパレスのコンペなどを展示するが、反動的な一等案として有名なボリス・イオファンのオリジナル・ドローイングを見たのは初めてである。ソビエトパレス・コンペでも、ETHが所蔵するCIAMアーカイブが活用されていた。ル・コルビュジエ、ギーディオンらのメンバーが、スターリンに送った手紙であり、選ばれた一等案は、革命の精神にそぐわないのではないかという批判である。これをスターリンが実際に読んだかどうかは知らないが、おそらくザハ・ハディドも安倍首相に直談判したかったに違いない。

写真:左上=スイス国立博物館本館 左下2枚=常設展 右上から=新館、ボリス・イオファンのドローイング、ル・コルビュジエのソビエトパレス落選案

2017/05/13(土)(五十嵐太郎)

グロスミュンスター大聖堂、聖ペーター教会

[スイス]

ロマネスク色が強い大聖堂や、内部は軽やかな古典主義の空間をもつ聖ペーター教会など、いずれの教会でも朝イチにホルンなどの管楽器を持ったおじさんたちが集まっている。が、演奏を始めたら、かなりヘタでずっこける。まだ少し明るいのだけど、夜の7時になると、あちこちの教会から一斉に鐘がなり、ぐわんぐわんと街中で共鳴し、路上の人たちが完全に音に包まれた状態になった。忘れがたいサウンドスケープである。

写真:左=聖ペーター教会 右=グロスミュンスター大聖堂

2017/05/13(土)(五十嵐太郎)

2017年06月15日号の
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