artscapeレビュー

2017年11月01日号のレビュー/プレビュー

《ONOMICHI U2》

[広島県]

尾道の谷尻誠/SUPPOSEによる《ONOMICHI U2》を訪れる。外から見ると、ほとんど手を加えていないように見える倉庫だが、内部に入ると、カッコいい空間が展開する。水辺のデッキも気持ちがよい。立地を生かした、見事なリノベーションによる成功例である。またソフト面に注目すると、サイクリスト向けのホテルもユニークなプログラムだが、飲食店やショップのセンスがよく、これと比較すると、残念ながら横浜の赤煉瓦倉庫の商業空間がださく思えてしまう。

2017/09/04(月)(五十嵐太郎)

《三次市民ホール きりり(KIRIRI)》

[広島県]

青木淳が設計した三次市民ホールを見学する。災害対策として、ピロティの上に施設全体が載っているが、下はすべて駐車場なので、郊外のファミレス型の空間構成とも言える。ただし、この建築にはいわゆる正面性がない。中庭や開口をあちこちに散りばめながら、ホールや楽屋も上部からの採光を可能とし、自然光を生かすのも、電源を喪失しても内部が明るさを維持することを想定しているからだ。なお、スタジオ群の上部空間は冗長性をもつ、リノベーション風のデザインであり、青木らしさが感じられる。

2017/09/04(月)(五十嵐太郎)

《神石高原町営小畠住宅》

[広島県]

土井一秀が手がけた《神石高原町営小畠住宅》は、平屋が直線二列で並ぶ町営住宅の老朽化に伴う建て替えである。その結果、雁行形による再配置で、各戸の視線をずらし、小さな集落のような空間のまとまりをつくる。全体の入口にある土を盛った部分も魅力的だ。各戸はすべて同じではなく、微妙にプランが違い、バリアフリー対応の室内を見学した。片流れ屋根は、天井高を上げることで、面積以上に広く感じる空間をもたらしつつ、外観にはキャラを与える。

2017/09/05(火)(五十嵐太郎)

《ここち Comfort Gallery 器》

[広島県]

前田圭介が増改築を行なった《Gallery 器》を見学する。もともとは店舗だったが、木の箱形の外観を与え、構造に由来する木のフレームを内外で反復することによって、イメージを刷新する。内部の奥側半分は、彼の作品ピーナッツでも見た湾曲する空間とコアを設けつつ、手前半分はガラスを開けると、全面的に外部とつながる。内外を連続させる空間が前田の醍醐味だろう。また2階は、隣の住宅との接続も可能になっていた。

2017/09/05(火)(五十嵐太郎)

《鞆の津ミュージアム》

[広島県]

竹原義二の設計により、蔵をリノベーションした《鞆の津ミュージアム》を学芸員に案内していただく。猪苗代の蔵を改造したアール・ブリュットの《はじまりの美術館》も彼が手がけ、入れ子状に部屋を挿入する手法は同じだが、鞆の津の方がダイナミックであり、2階がない分、天井も高い。外観は基本的に昔の状態を保存しており、すぐに美術館だとはわからない。なお、入口には手づくりの精巧なガンダムの巨大模型が置かれていた。

2017/09/05(火)(五十嵐太郎)

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