2018年10月15日号
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artscapeレビュー

原田直次郎 展──西洋画は益々奨励すべし

2016年03月15日号

会期:2016/02/11~2016/03/27

埼玉県立近代美術館[埼玉県]

“油絵の先駆者”高橋由一と“近代絵画の立役者”黒田清輝のあいだに、渡欧して油彩技法を身につけた洋画家が何人かいる。五姓田義松、山本芳翠、松岡寿、原田直次郎ら明治美術会の画家たちで、みんな抜群に絵がうまい。由一や清輝よりうまいと思う。なのに由一と清輝の陰に隠れてほとんど日の目を見なかったのは、モダニズムとナショナリズムのせめぎ合いに揺れた明治美術史のいたずらというほかない。とりわけ原田直次郎は36歳で夭逝したこともあって、没後10年の1909年に親友の森鴎外が企画した遺作展以来、本格的に紹介されたことはなく、今回がじつに100余年ぶりの回顧展になるという。ただ活動期間が短かったため作品点数が少なく、松岡寿や大下藤次郎、ドイツで交流のあったガブリエル・フォン・マックスやユリウス・エクステルらの作品も出ているため、キャプションを確かめずに絵だけ見てすべて原田の作品だと勘違いするアホもいるかもしれない。原田の代表作《靴屋の親爺》や《老人》なんか何点も出ているから要注意だ。まあこれだけ作品が模写されるというのは、いかに原田が慕われていたかということの証だろう。この《靴屋の親爺》や《老人》などはよくも悪くも日本人離れした技量を誇るが、帰国後ナショナリズムの吹き荒れる日本では受け入れられず、《騎龍観音》や《素尊斬蛇》といった日本的主題に基づくキッチュな折衷絵画に向かわざるをえなかった(前者は埼玉には出品されず、後者は関東大震災で焼失)。こういう逆境のなかで制作した苦肉の作品というのは、いつの時代にも興味深いものだ。いずれにせよ、歴史のはざまに埋もれて目立たなかった画家の発掘は公立美術館の重要な役割だと思う。

2016/02/11(木)(村田真)

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