artscapeレビュー
竹内公太「公然の秘密」
2012年05月15日号
会期:2012/03/17~2012/04/01
XYZ collective(SNOW Contemporary)[東京都]
初めて訪れるXYZコレクティブ。駒沢大学駅から迷いながらようやくたどりつくと、シャッターの前に置かれた透明のブースのなかに竹内らしき人が入っている。ドアの絵が描かれたドア(つまりドアの表面に「ドアを描いた絵」を貼ってある)を開けると、内部は薄暗い車庫のような空間。壁面に、福島第一原発の前でカメラに向かって白い防護服の作業員が指さしをする動画が映し出されている。ネットで話題になった「指さし作業員」だ。その横に椅子とマイクのようなものが置かれ、だれかが話している。マイクのようなものは糸電話でシャッターの外に伸びているので、さきほどの竹内らしき人と話してるらしい。「らしい」とか「らしき人」というのは実際にぼくが糸電話で話してないので確認できないからだが、話したところで本人かどうか断定はできないだろう。同様に、いやそれ以上にネット上に飛び交う情報は、とりわけ原発事故に関する情報は、なにがホントでなにがウソか見きわめるのが難しい。つまりこの個展は「指さし作業員」が自分の仕業であることを告白すると同時に、ホントにそれが竹内の仕業なのかをもういちど来場者に問い直しているようにも受け取れる。あたかもカメラに向かって指をさすように。またそれによって「指さし作業員」がたんなる「パフォーマンスアート」に回収されることを拒み、まさに原発事故の真相のように「薮のなか」にまぎれようとしているのかもしれない。
2012/04/01(日)(村田真)