artscapeレビュー
大友克洋GENGA展
2012年05月15日号
会期:2012/04/09~2012/05/30
3331アーツ千代田[東京都]
スタジオジブリや『ワンピース』など、近ごろ美術館やギャラリーでのマンガの原画展が流行ってる。しかも美術展などに比べてケタ違いの大量動員に成功しているのだから困ったもんだ。本来マンガというのは雑誌などに複製されたかたちが完成品だから、原画は見せるべきものではないはず。もちろん、いつも複製に親しんでいるからこそ読者は原画を見てみたいと思うのだし、そもそも大量の複製が完成品だから大量動員もできるのだが、でもそれじゃ1点制作の美術の立場がないでしょ。つーか美術の立場なんかとっくにないのだが。ともあれ、大友はほかのマンガ家に比べて圧倒的に絵がうまいので原画展も一見の価値がある。とくに今回は代表作『AKIRA』の原画2,300点を並べた展示が見もの。原画そのものもさることながら、シンプルな陳列棚はまるで博物館のようなインスタレーションだ。また、『童夢』に出てくる超能力で凹ませた壁が立体的に再現され、その前で記念撮影できるというのも笑える。実はこの原画展、宮城県出身の大友が東日本大震災へのチャリティとして企画したたもので、入場料収益の30パーセントを被災地復興に役立てる意向だ。大量動員できるマンガ展の最良の有効活用といえる。なお同展は日時指定の完全予約制。
2012/04/09(月)(村田真)