artscapeレビュー
トーマス・デマンド展
2012年08月01日号
会期:2012/05/19~2012/07/08
東京都現代美術館[東京都]
日本で初めて催されたトーマス・デマンドの展覧会。紙で構築した対象を撮影した写真作品をはじめ、同じ要領で制作されたストップモーション・アニメーションもあわせて16点が展示された。福島第一原発の管制室やアメリカ大統領執務室など、社会性と政治性が強いモチーフを選ぶことによって同時代的なリアリティを、紙の平面性を徹底することによって現代社会におけるフラットなリアリティを、それぞれ巧みに取り入れていることがよくわかる。それらのイメージが写真によって伝達されるという点も、今日的な状況と密接に関わっているのだろう。ただ、ひとたびそうした作品の構造を発見してしまうと、そこから先へ想像力が広がっていかないところに、デマンドの作品の弱さがある。作品数が増えるにしたがって作品への視線が薄弱にならざるをえないといってもいい。いっそのこと、撮影の済んだ紙工作を一気に燃やしてしまえば、私たちの視線をもっと熱くすることができたのではないか。
2012/07/08(日)(福住廉)
artscapeレビュー
/relation/e_00017166.json
l
10041040