artscapeレビュー
アン・グットマンとゲオルグ・ハレンスレーベンの世界──リサとガスパール&ペネロペ展
2012年08月01日号
会期:2012/07/14~2012/08/26
明石市立文化博物館[兵庫県]
フランス在住の絵本作家アン・グットマンとゲオルグ・ハンスレーベンが生み出した絵本『リサとガスパール』と『ペネロペ』の原画展。油彩による原画は、鮮やかな色彩と繊細な筆づかいをあますところなく伝える。観ているうちに、絵本の原画というより絵画作品を鑑賞しているような感覚を覚えた。不思議なのは、キャラクターたちがぬいぐるみのように図式化されて、その表情が意図的に排除された造形でありながら、どこか人間くささを感じさせることだ。展覧会チラシによれば、『リサとガスパール』は「犬でもうさぎでもない不思議ないきもの」とあり、そうしたなににも分類しがたい曖昧さは、作者自身の意図するところであるのかもしれない。不思議なキャラクターたちは、印象派風のスタイルとフォーヴィスムの絵画を想わせる色彩に溢れたパリの日常風景にすんなり溶け込んでいる。その風景もまた、実際のリアルな風景と絵本のヴァーチャル世界のあいだを行き来するものであるかに思える。本展には絵本原画のほかに、作家が使用したパレットや絵具、仕掛けのある絵本のための指示書なども出品されており、絵本の発想やプロセスの一端がわかって面白い。[橋本啓子]
2012/07/19(木)(SYNK)