artscapeレビュー

アートと音楽──新たな共感覚をもとめて

2012年12月15日号

会期:2012/10/27~2013/02/03

東京都現代美術館[東京都]

「美術と音楽」ならカンディンスキー、クレー、シェーンベルクあたりが定番だが(3人ともほぼ同時代にドイツ圏で活動し、ナチスの迫害を受けたという共通点がある)、「アートと音楽」だとジョン・ケージからということになるだろう。どう違うかというと、前者は画家が楽器を弾いたり音楽をモチーフに絵を描いたり、逆に音楽家が絵を描いたりするように、ジャンルの枠組みは保たれつつジャンル間の相互乗り入れが見られるのに対し、後者は美術と音楽のジャンルの枠組み自体が溶けて制作コンセプトも創作プロセスも重なり、ともに「アート」を志向する点だ。ほんとかなあ。たとえば、展示室に円形のプールをつくって数十枚の磁器製の器を浮かべ、水を加熱することによって流れをつくり器同士を接触させるセレスト・ブルシエ・ムジュノの《クリナメン》は、見て楽しい聞いてうれしい(というほどでもないが)作品で、これは美術とも音楽ともいえない、強いていえば「アート」というほかないでしょうみたいな。もうひとつ、既存のレコードを氷で型どりプレーヤーにかける八木良太の《Vinyl》は、逆に見ても聞いてもツライものがあり、それゆえに思わず笑ってしまう点で「アート」以外に遊んでくれるジャンルはないでしょう。そんなアイスべきアートな展覧会。ジャンジャン。

2012/11/13(火)(村田真)

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