artscapeレビュー

山口華楊 展

2012年12月15日号

会期:2012/11/02~2012/12/16

京都国立近代美術館[京都府]

動物や鳥、樹木、花などを描き続けた画家、山口華楊(1899~1984)の生涯と画業を紹介する大規模な回顧展。新たに見つかった初期の本画を含む花鳥画、動物画の代表作に加え、下図、素描なども数多く展示された。京都に生まれ、京都を拠点に活躍した作家なので、以前からちょこちょこ作品を見る機会はあったのだが、これほど纏まった数を見るのは私は初めて。70年あまりの制作の軌跡をたどる本展では、華楊の生真面さと弛まない探究心、生命を慈しむ態度といった作家の人となりも同時に味わえたのが嬉しい。徹底した写生をもとに描かれた作品のなかでも、特に動物画の世界には惹きつけられた。ネコやリス、小鳥などのかわいらしい表情やポーズ、猿、鹿、馬、ライオン、トラなどの動作や顔つき、それらの瞳、尻尾や足先に至るまで、細心に描かれた動物は、正面を向いているものも多いせいか、大きな作品でもつい画面に近づきたくなってしまうような動的魅力がある。順路の最後には鳥や動物のスケッチを貼りまぜ屏風に仕立てられた《貼り交ぜ屏風》があったのだが、これがまた素晴らしい。寝そべっていたり、走っていたり、遠くを見つめていたりと、さまざまな角度からとらえられた動物たちの動作は、力強さと生命感にも溢れている。「見る」ことに座禅か修行のように取り組んだという作家の眼差しにも思いがめぐる展覧会だった。

2012/11/01(木)(酒井千穂)

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