artscapeレビュー
MOTアニュアル2012──風が吹けば桶屋が儲かる
2012年12月15日号
会期:2012/10/27~2012/02/03
東京都現代美術館[東京都]
この弛緩しきった緊張感はなんだろう? 2000年の「ギフト・オブ・ホープ」を最後に、ゆるーい団体展状態が続いていた「MOTアニュアル」だが、今年は久々にコーフンした。「美術館の備品を手作りで再現して、設置しました」などと記した紙を並べた森田浩彰に始まり、下道基行、ナデガタ・インスタント・パーティー、奥村雄樹、佐々瞬、田村友一郎、そしてなにも展示しない田中功起まで、すべてがこの美術館、この展覧会をモチーフに作品づくりをしているように見受けられる。のみならず、出品作家同士が協力し、相互に影響し合い、すべての作品がつながってひとつの大きな作品を形成しているようにも感じられるのだ。ひとりひとりの作品は相変わらずゆるいけど、ゆるいまま合体したら個々の作家性を超えてメタアニュアルなできそこないのガンダム状態になりました、的な前代未聞の事態に陥っているのだ。「MOTアニュアル」史上最高のデキだと思う。いや結論はまだ早い。桶屋が儲かるまでもう少し時間がかかりそうだから。これはもういっかい見に行く価値がある。
2012/11/13(火)(村田真)