artscapeレビュー
藤原敬介『インテリアデザイン──美しさを呼び覚ます思考と試行』
2014年03月01日号
インテリア・デザイナーの藤原敬介が自ら手掛けたプロジェクトの紹介を通じて、デザインの実践とそこに至る思考のプロセスとを記した書。著者は、人の琴線に触れて感動を与える「美しさ」とは次の四要素にあると考えている。ひとつ目が「曖昧であること」、言葉では曰く言い難いもの。二つ目が「呼び覚ました姿」、日常生活に潜んでいるが気付きにくいもの。三つ目が「変化のかたち」、時とともに変わりゆくもの。四つ目が「可能性の追求」、よりよき未来をつくるための〈挑戦・検証・確認〉という行動が美しさの創成に繋がるという。デザイン行為に内包される問題解決に至るまでのプロセス──アイディアの連なりと幾多の試行──が、実例に即して語られている。普段は「完成形」としてのモノやインテリアしか見ない私たちにとっては、それがデザインをより深く理解するために参考になる。「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ」のショップデザインを手掛ける藤原は、デザインに悩むとき、三宅一生の次の言葉を思い浮かべると述べている。曰く、「デザインの仕事はじつに面白い。私がこの仕事をなんとかめげずにやってこられたのは“デザインには悲しみがそぐわない、デザインには希望がある、そしてデザインは驚きと喜びを人々に届ける仕事である。”というまことに単純素朴な理由からである」と。読後、身の周りの環境をもう一度見渡して、諸感覚を研ぎ澄ませたくなる本である。[竹内有子]
2013/02/15(土)(SYNK)