2021年12月01日号
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artscapeレビュー

新宿・昭和40年代 熱き時代の新宿風景

2014年03月01日号

会期:2014/02/08~2014/04/13

新宿歴史博物館[東京都]

新宿副都心の歴史を写真によって振り返る展覧会。同館が所蔵する資料から、主に昭和40年代の新宿を撮影した写真およそ130点を展示した。
よく知られているように、東京オリンピックの前後から東京は大規模な都市改造を行なった。景観論争の的となっている首都高速が整備されたのも、新宿西口の淀橋浄水場の跡地に高層ビル群が建設されたのも、この頃である。昭和40年代に現在の「東京」の輪郭が定まったと言ってよいだろう。
車道を走る都電や東口の植え込み「グリーンハウス」にたむろするフーテン、歩行者天国を歩く家族連れ、ジャズ喫茶や新宿風月堂に集まる若者たちなどの写真を見ると、都市と人間の生態が手に取るようにわかる。そこには都市に生きる人びとの暮らしや身ぶり、思想が表現されていたのだ。言い換えれば、そのような生態があらわになる都市構造だったのかもしれない。
だが現在、そうした都市の表現主義は急速に後景化しつつある。ストリートは監視カメラによって隈なく管理されているため、わずかでも逸脱した表現はたちまち排除されてしまうし、都市を構成する建造物も、ショッピングモールのような内向性やネットカフェのような個室化に依拠しているため、そもそも表現としての強度が著しく弱い。端的に言えば、街としての面白さが一気に損なわれつつあるのだ。これは新宿に限らず、例えば駅前の猥雑なエリアを再開発によって一掃しつつある府中のように、国内の都市圏に通底する今日的な傾向だと言ってよい。
そのような都市構造の変容を如実に物語っているのが、本展に展示されている「新宿西口広場」が「西口地下通路」に変更された瞬間をとらえた写真である。当時、新宿駅西口はヴェトナム戦争に反対するフォークゲリラの現場で、多くの人びとが集まって賑わっていたが、その管理に手を焼いた行政当局は、この「広場」を「通路」として呼称を変更することによって彼らの排除を法的に正当化した。いわく、ここは人が集まる「広場」ではなく、人が通過する「通路」である。よって、人が滞留してはならず、すみやかに解散せよ。本展では、行政が公共空間の質を強制的に歪める決定的瞬間を目撃することができるのだ。
2020年の東京オリンピックに向けて、都市の再編成が進行することは間違いない。しかし、そのときいままで以上に表現を抑圧するとすれば、都市はますます求心力を失ってしまうのではないだろうか。

2014/02/11(火)(福住廉)

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