2021年12月01日号
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artscapeレビュー

愛せよコスメ!

2014年03月01日号

会期:2014/01/25~2014/03/30

伊勢半本店 紅ミュージアム[東京都]

江戸時代後期、文政8(1825)年に紅屋として創業した伊勢半は、戦前期から西洋風のスティックタイプの口紅の研究に取り組んでいたという。そうした試みが開花し、伊勢半が紅屋から総合化粧品メーカーとして飛躍するのは第二次世界大戦後。「キスミー」ブランドのもとで、口紅をはじめとして、香水、リップクリーム、ファンデーションなど、さまざまな商品が販売されてきた。この展覧会は、商品やパッケージ、広告や宣伝活動など、さまざまな側面から戦後のキスミーブランドの歴史をたどる構成である。たとえば、戦後すぐにはアメリカ的、アメリカ受けする真っ赤な色の口紅が流行。その後もトレンドに合わせて口紅の色も変化してゆく。映画がモノクロからカラーになったことで、海外の映画女優たちのメイクがお手本になったり、演出色が優れない蛍光灯の普及によってそれを補うべくメイクの色が鮮やかになる。販売方法もまた女性のメイクに影響する。一般に対面販売が行なわれていた化粧品において、セルフ販売方式のパッケージを最初に開発したのは伊勢半だ(昭和38年)。これによって美容部員に勧められて買うのではなく、スーパーやドラッグストアで消費者が自ら好きな商品、色を買うことができるようになったのである。最近の商品では、少女漫画風のヒロインをパッケージに配した「ヒロインメイク」シリーズが印象的だ。「エリザベート姫子」と名付けられたこのキャラクターによる広告は、メイクに縁のない筆者にも強烈な印象を与えた。ファッションもそうであるが、化粧品もまた社会や時代の変化と密接に結びつき、そして時代をつくってきたことがよくわかるすぐれた企業史展である。[新川徳彦]


展示風景

2014/02/21(金)(SYNK)

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