artscapeレビュー

三好耕三「RINGO 林檎」

2015年12月15日号

会期:2015/10/27~2015/12/26

PGI[東京都]

PGI(フォト・ギャラリー・インターナショナル)は、1979年に東京・虎ノ門にオープンした。日本では1978年開業のツァイト・フォト・サロンに次ぐ、老舗のオリジナル・プリント販売ギャラリーである。1996年には別館のP.G.I.芝浦(田町)をオープン。虎ノ門のギャラリーは2000年にクローズした。その後はずっと芝浦で営業を続けてきたのだが、このたび東麻布に移転し、これまでギャラリーの略称として使われてきたPGIを正式な名称とすることになった。そのリニューアル・オープニング展として開催されたのが、これまでもPGIの看板作家の一人として数々の個展を開催してきた三好耕三の「RINGO 林檎」展である。
16×20インチという超大判カメラを使って、2012年から青森の林檎の樹を撮影したシリーズだが、いかにも三好らしい、風通しのよい作品に仕上がっていた。三好自身の説明を聞いて初めて知ったのだが、林檎の樹のごつごつと歪み、捩じれ、横に広がった樹形は、雪や風のような厳しい自然条件によってでき上がったのではなく、いかにひとつの枝に果実をたくさん実らせるかを追求した結果、人為的な剪定を繰り返してできたものなのだという。そういわれれば、林檎の樹はライフサイズの盆栽を思わせる形状をしている。その武骨な幹や枝ぶりと、つやつやとみずみずしい果実とのコントラストが、モノクロームの豊かな諧調で見事に表現されている。三好の風景写真に特有の、画面全体がゆったりと呼吸しているような感触を、充分に味わい尽くすことができた。
以前に比べてギャラリーのスペースもやや大きくなり、これから先も、若手とベテランとが噛み合った、充実した展示が期待できそうだ。

2015/11/04(水)(飯沢耕太郎)

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