artscapeレビュー

ティム・バーバー「Blues」

2015年12月15日号

会期:2015/10/10~2015/11/14

YUKA TSURUNO GALLERY[東京都]

ティム・バーバーは1979年、カナダ・バンクーバー生まれ。アメリカ・マサチューセッツ州で育ち、現在はニューヨークを拠点として活動している。ライアン・マッギンレーなどとともに、アメリカのニュー・ジェネレーションの写真家として注目されている若手で、繊細でセンスのいいポートレートやスナップをファッション雑誌などにも発表している。
だが、今回東京・東雲のYUKA TSURUNO GALLERYで発表した「Blues」は、これまでの作品とは一線を画するものだ。全作品が19世紀以来使われている古典技法の一つで、青みのある画像がミステリアスな雰囲気を醸し出すサイアノタイプでプリントされているのだ。画像そのものはiPhoneで撮影された軽やかなスナップショットなので、古典技法のテクスチャーとはミスマッチなのだが、逆にそれが面白い効果を生み出している。特にいくつかの作品に写り込んでいる「影」の描写が魅力的だ。「影」を画面に取り込むことは、リー・フリードランダーや森山大道、さらに最近ドキュメンタリー映画『ヴィヴィアン・マイヤーを探して』が公開されて話題を集めているヴィヴィアン・マイヤーなどもよく試みている。だが、バーバーの「青い影」は、彼らの存在証明として「影」の描写よりもより希薄で、フワフワと空中を漂うような浮遊感がある。彼が今後もサイアノタイプの作品を作り続けるかどうかはわからないが、現代写真と古典技法の組み合わせは、さらなる融合の可能性を秘めていると思う。

2015/11/13(金)(飯沢耕太郎)

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