artscapeレビュー

Works-M Vol.7『クオリアの庭』 progress.4 Kyoto「past_」

2015年12月15日号

会期:2015/11/21~2015/11/23

京都芸術センター[京都府]

Works-M Vol.7「クオリアの庭」は、「移動をつづけながらクリエーションを行う」というコンセプトのもと、三浦宏之が作・構成・振付・美術を手がけるダンス作品。昨年11月の神戸公演progress.1「lie_」に始まり、今年8月の秋田公演、10月の岡山公演を経て、京都でのprogress.4「past_」と、各地でワーク・イン・プログレス公演を重ねてきた。来年1月には横浜にて、最終成果として「クオリアの庭」の上演が予定されている。
音・美術・ダンス、つまり非物質的な現象と物質的存在と運動が、空間内に同一のレベルで共存しつつ拮抗する。ミニマルに抑制され、計算された演出の洗練からは、そうした印象を受けた。斜めにピンと張られたいくつもの赤い糸が空間を立体的に交差する。落下し続ける白い砂や振子の運動が、時間の流れを可視化する。様々に移り変わる音響もまた、時間の持続や断絶とともに、具体的/抽象的な風景を召喚する。ハーモニックに重なり合う声、規則正しい電子音、不穏なノイズ、外国語の飛び交う街頭の喧騒、木漏れ日や小鳥のさえずり、荒野を渡る風……。その空間の中に存在する5人のダンサーたちの身体は、時に共鳴してユニゾンを描いてはふっと離れ、同期とズレを繰り返す様子は音叉の共鳴や和音を思わせ、距離を隔てた伝播や共鳴を互いに見せながら、この空間自体を少しずつ調律していくように感じられた。音、身体、美術、どこかで生じた運動が他の要素を振動させ、ふっと風景が立ち上がってはたちまち消えていく。その生成と消滅の繰り返しの中に、それぞれの意志を持って空間を生きる5つの身体があった。

2015/11/22(日)(高嶋慈)

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