artscapeレビュー
MOTコレクション
2015年12月15日号
会期:2015/11/07~2016/02/14
東京都現代美術館[東京都]
たまにしか見ないけど、コレクション展もここ数年ずいぶん変わってきたなあ。入ってすぐのアトリウムには、大友良英らによるサウンド・インスタレーション。その奥では「戦後美術クローズアップ」として、中西夏之、池田龍雄、桂ゆき、中村宏ら50-60年代の作品を展示しているが、部屋の中央に仮設壁を建てたり思い切ったことをやっている。第2部では「フランシス・アリスと4つの部屋」と称して、アリスのほかボルタンスキー、河原温、塩見允枝子らの思索的な作品を並べ、最後の部屋では高柳恵里や豊嶋康子らの作品らしからぬ作品を「標本」のように陳列しているのがおもしろい。常設展示に工夫を凝らし、いろいろ試みるのはとてもいいことだと思うんだけど、でも常設展示を逸脱して企画展示になっている。いやそのこと自体は評価するとして、しかし常設展示ならではの「いつものヤツ」が「いつもの場所」にないことの欠落感、喪失感も同時にあなどるべきではないような気がする。これは単にお約束の作品に会いたいというレベルの話ではなく、わが国の首都最大の美術館にいまだ近現代美術のスタンダードが常設されていないということだ。
2015/11/20(金)(村田真)