artscapeレビュー

西野達「写真作品、ほぼ全部見せます」

2015年12月15日号

会期:2015/09/05~2015/10/31

TOLOT/ heuristic SHINONOME[東京都]

すでに会期は終わっていたのだが、そのまま会場に展示されていたので、西野達の写真作品をまとめてみることができた。
シンガポールのマーライオン像やニューヨークのコロンブス像を、ホテルの部屋の中に取り込んだ大規模なインスタレーション作品(《The Merlion Hotel》〔2011〕、《Discovering Columbus》〔2012-13〕)で知られる西野だが、それらのドキュメントとしてだけではなく、写真作品としても高度なレベルに達しているものが、たくさんあることがよくわかった。通行人の頭の上にベッドなどの家具を積み上げた《Life’s little worries in Berlin》(2007)や《Life’s little worries in Osaka》(2011)、豆腐で作った仏陀に醤油を噴水のように振りまく《豆腐の仏陀と醤油の後光──極楽浄土》(2009)など、発想の柔軟さと豊かさ、それを形にしていく手際の鮮やかさを堪能することができた。
1960年、名古屋出身の西野は、武蔵野美術大学大学院修了後、ドイツのミュンスター大学美術アカデミーで学び、現在はドイツを拠点として活動している。いわゆる「彫刻」の枠組みにはおさまりきれない、仮設のインスタレーションが彼の持ち味だが、それには画像として固定することが不可欠の要素となる。その写真撮影のプロセスが洗練されているだけでなく、遊び心にあふれているところがとてもいい。

2015/11/13(金)(飯沢耕太郎)

2015年12月15日号の
artscapeレビュー