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2015年12月15日号のレビュー/プレビュー

デボラ・コルカー・カンパニー『ベル』

会期:2015/10/31~2015/11/01

KAAT神奈川芸術劇場[神奈川県]

貞淑な妻と高級娼婦という二面性を描く物語「昼顔」をモチーフとし、冒頭はダンサーたちの動きがピタッとそろったバレエで始まり、途中からは仮面をつけた男が参加し、やがて上下、奥行きの運動が激しくなる娼館で踊る。ステージ全体をおおう大きな布や舞台を仕切る膜を使い、シルエットやボディラインだけを見せる演出が美しい。

2015/11/01(日)(五十嵐太郎)

鴻池朋子 展「根源的暴力」

会期:2015/10/24~2015/11/28

神奈川県民ホール ギャラリー[神奈川県]

今回の個展では、3.11の震災を経て、自然と暴力に注視し、彼女の出身地である秋田のフィールドワークを踏まえ、地球的な視点を表わすオブジェや革を縫う絵画の新作を発表している。おとぎ話のほか、切り離す男の技術とつなぐ女の技術など、各分野との研究者の対話が興味深く、またそれをもとに作品を制作している。

2015/11/01(日)(五十嵐太郎)

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進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド

映画『進撃の巨人』後編を見る。予想どおりというか、特撮は見せ場ありだが、人間ドラマとしては失敗だろう。前者はいいが、後者はこうなるとわかっているのだから、事前に対策を立てられないものか。俳優がウワァアアーとか叫ぶベタな演出も、ホントやめてほしい。また世界の秘密をかいま見せる白い部屋が突然出てくるのだが、こういう重要な場所が単純にデザインとしてカッコ悪いのは致命的である。ちなみに、「エンド・オブ・ザ・ワールド」のエンドは「終わり」ではなく、「端」を意味するものだった。

2015/11/01(日)(五十嵐太郎)

竹中工務店《やわらぎ 森のスタジアム》

[愛知県]

竣工:2013年

愛知へ。竹中工務店が手がけた《やわらぎ 森のスタジアム》を見学する。企業の運動場に新設された山中のドームだ。造成地を削りながら、観客席とアリーナの空間を生み出し、その上に高さを抑えつつ、雨水処理を考慮した膜のジグザグ屋根を架ける。今年は新国立競技場問題でさんざんモメたので、片側は完全に開き、自然の風景が視界に入るこの建築は、余計さわやかなドームだと感じられる。

2015/11/02(月)(五十嵐太郎)

芦澤竜一《セトレ マリーナびわ湖》

[滋賀県]

竣工:2013年

芦澤竜一が設計した《セトレ マリーナびわ湖》を訪れた。水辺に位置し、生態系の一部として建築をつくるが、街から外れた自然の風景のなかにあるわけではなく、周囲にはホテルや商業施設がある。コンクリートの斜柱、折面のスラブ、左官の技術を組み合わせたユニークかつ力強い造形だ。山の風景と呼応する屋上の小山群も印象的である。また結婚式のためのチャペルでは、空間全体を楽器に変えており、エオリアンハープの仕組みによって、風の流れを可聴化する試みが興味深い。
写真:上=《セトレマリーナびわ湖》、下=チャペル

2015/11/02(月)(五十嵐太郎)

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