artscapeレビュー

三宅砂織/山本優美「Why did I laugh tonight?」

2015年12月15日号

会期:2015/10/31~2015/12/06

Gallery OUT of PLACE TOKIO[東京都]

Gallery OUT of PLACE TOKIOで陶芸家の山本優美と二人展を開催している三宅砂織が用いているフォトグラムも古い技法だ。写真の発明者の一人である、イギリスのウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットが、すでに1830年代に「フォトジェニック・ドローイング」と称して実験を試みている。
ただし、三宅の手法は印画紙の上に物体を置いて光に曝し、そのシルエットを写し取る通常のフォトグラムとは異なっていて、透明な素材にドローイングしたものを「ネガ」として使用し、それにガラスやプラスチックのオブジェをまき散らすように配置してプリントするものだ。最終的な発表の形態は印画紙なのだが、画像の見かけは絵画作品そのものである。それでもスナップ写真を素材にしてドローイングしている場合が多いのと、モノクロームに仕上がるので、写真作品と見えなくもない。その絵画と写真の折衷というあり方が、独特の雰囲気を醸し出していた。
今回の展示では、前回の展示に比べると大きな作品が増えてきている。大判の印画紙を4枚繋ぎ合わせているものもある。以前は作品が小さかったので、親密な印象を与えるものが多かったのだが、画面が大きくなってダイナミックな躍動感が出てきた。同一の「ネガ」から何枚かプリントしたり、裏焼きにしたりした作品もあり、以前よりも絵画的な要素が強調されているようにも見える。三宅の作品における写真的要素と絵画的な要素は、せめぎ合いつつ、ヴァリエーションを増やしていくのだろう。その上で、今回何点か出品されていた「花」のシリーズのように、特定のテーマに絞り込むことも考えられそうだ。

2015/11/19(木)(飯沢耕太郎)

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