artscapeレビュー
レンブラント リ・クリエイト展2016 ─時代を超えてよみがえる復元画─
2016年09月15日号
会期:2016/07/30~2016/09/04
そごう美術館[神奈川県]
「リ・クリエイト」とは、絵が描かれた当時のオリジナルの色やサイズにできるだけに近いかたちに再現する複製画の手法。といっても原画の画像にデジタル処理を施したもので、パッと見、単なる複製画と変わらない。そんなもんに入場料1,500円を払うのは高い気もするが、しかし現在のオリジナル作品よりオリジナルに近い複製画(ややこしいわい!)と考えれば安い、ともいえる。しかも自画像41点を含むレンブラントの初期から晩年まで約200点の代表作品がそろうというのだから、オリジナルではありえない話。会場に入ると、さほど広くない展示室に200点ぎっしり並んでいる。まず気づくのは額縁がないこと。これは経費節約のためだけでなく、スペースの制約から省いたのかもしれない。そのせいか、絵を見ているというより画集をながめてる印象だ。リ・クリエイトの質的な限界もある。たしかに原画より明るくなったものが多いが、でも大半は単なる複製画にしか見えないし、シャープさに欠ける。特にレンブラントは厚塗りなので、絵具の盛り上がりが描かれた物体の質感をそのまま表わす場合が多いのに、それがうまく表われていない。ルーヴル美術館の《ダヴィデ王の手紙を持つバテシバ》などは、質の悪い画像しか提供されなかったのか、まるで戦前の画集並みの再現力。また、大作になるとプリントを2枚3枚と継ぎ合わせなければならないが、その継ぎ目が目ざわりだ。最大の問題は《夜警》で、アムステルダムにある原物は制作当時のオリジナルより縦横ともに数十センチ縮められているが、それをオリジナルのサイズに復元。それはいいのだが、残念なことに天井が低いため上部を1メートルほどカットしてしまったのだ。これは致命的ですね。でも逆に、こんなことできるのもリ・クリエイトだから。天井が低いからってオリジナルをカットしたら大問題だからね。でもじつは昔《夜警》が縮められたのも、似たような理由によるものだったらしい。
2016/08/02(火)(村田真)